恋愛シンドローム
かさり、と紙を開く音がした。
反射的に音の方へと振り返ると、難しそうな顔で書面を睨むルルーシュが居て。手紙らしいそれに一通り目を通したルルーシュは浮かない顔で溜め息を吐いてから、紙を畳んで封筒に入れ直していた。
そうしてから時計を見て、少しだけ悩んだような素振りをしたが直ぐに席を立つ。
何となく気になる光景だった。直感と言うべきものだ。一連のルルーシュの行動に、根拠のない胸騒ぎ。
だからスザクは、教室から出て行こうとするルルーシュに声をかけた。
「ルルーシュ?どこか行くの?」
一番後ろの席と言うことで、声はとても掛けやすい。別に、何の不自然もなかった筈だ。
実際、ルルーシュはスザクが呼び止めたことに対して不思議そうな顔は一切しなかった。
「……ちょっと、野暮用だ」
が、その理由を口にすることには少しの気後れがあるらしい。口籠もってから、一瞬だけ眼を逸らしたルルーシュの顔には、苦笑が浮かんでる。
「ストーカーでもされちゃ、たまらないからな。ちょっと行ってくる」
それはまるで独り言のようで、スザクに伝えるつもりはなかったのだろう。
だが、聞こえてしまった内容に懐疑を覚えて。その頃には、既にルルーシュは廊下へと消えてしまっていた。
(………ストーカー、って………)
手紙、時間、野暮用、ストーカー。キーワードを並べて、思いつくシチュエーションがひとつ。
「ッ…!」
思わず椅子を引いて立ち上がりそうになっていた。が、落ち着け、と自分に言い聞かせる。
(ル、ルルーシュだし、珍しいことじゃないのかもしれないし…)
覗き、出歯亀、そんな単語が頭を過ぎったが、そもそも自分はそんな真似ができる性格でもない。
(大体、僕には関係ないじゃないか…ルルーシュが誰と付き合うとか………‥)
自分で“関係ない”と思って、落ち込んでしまった。
(…………関係なくはない、…と、思いたいけど、僕がどうこう言うような立場じゃ、ない…)
ぎゅ、と両の手を机の上で握る。
視界の端には空席のルルーシュの机。
時計を見れば、まだ余裕はあれど、休み時間の終わりは近かった。
(次の授業は世界史の……)
確か試験があった筈だ。ルルーシュは世界史が苦手だと言っていた。(但し、スザクはそれが嘘であることを知っている。彼は幼少期から頭脳がずば抜けていた上に、生まれが由緒ある皇族である以上、歴史を身に、血として受け継ぎ、教育されてきた人間なのだ。苦手な訳がないのだが、ここではそんなことはどうでもよかった)
いつの間にやら、教室からはスザクの姿も消えていた。
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2006.12.11
207β
さま、片恋15題 『4.偶然を装ったり』