※ルルーシュにょた(性悪)注意!
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 ルルーシュ・ランペルージと枢木スザクは切っても切れない縁で結ばれている。
 まるで恋人のように連れ合う2人を見た者も、まるで親の仇のように相対している2人を見た者も、旧い友人か、はたまた絶縁状態か、いずれにしても彼らの関係を目にした者が一様に思うのは、2人の間に入れる人間はいないということだった。



 衝撃の音は、裏庭いっぱいに広がった。
 プラスチックのゴミ箱が割れ、中のゴミが飛び散り、体ごと突っ込んだ男はコンクリート壁に派手な音を立て、呻いた。
 あまりにその程度が大きいものだったから、周りにいた男の仲間たちは呆然とその様を見やるばかり。
 拳一発で男を殴り飛ばした張本人は、殺気すら篭もった空気を解かない。男が再びかかってくるならば容赦しないし、仲間たちも然り。この場のまごうことなき支配者だった。
 ……が、そんな張り詰めた空気の中、ひとり悠然と少女は微笑む。血なまぐさい場に負けじ劣らない、嫣然たる笑み。――本当の支配者は、彼女だと思い知らされる。
「先輩方、気は済みましたか?」
 涼やか声だ。場にそぐわないくらいその声はよく透る。
「ランペルージ、てめぇ…っ」
 男の濁声が唸る。一歩、男のひとりが前に出れば、彼女を庇うように少年もまた動く。その仕草に男たちは怖じ気る。
「枢木…ッ!」
「スザクの武勇伝はあなた方もご存知でしょう? この前も生身で拳銃数人相手に立ち回りをやらかしましてね。その時のかすり傷がまだ残っているようですが、まああまり影響はないでしょう」
 だから楽しめますよ? とにっこり笑う少女に対して、男たちは2人を交互に見る。その表情は屈辱にまみれていて、すでに敗者の物だ。
 彼女を庇うよう立つ少年は何も発しない。ただ、視線だけで、彼女を害しようものならば容赦はしないと男たちに告げている。
 このまま引き下がるのは癪だ。けれど少年に勝つ術が思い浮かばない。少女はそんな男たちに彼女なりの助け舟を出す。
「二度と私に近寄らなければこの場は見逃してあげますよ、先輩方。好きに口を開いて頂いて結構。けれど私やスザクのことは金輪際、口にはしないこと。ああ、私やスザクの視界に入らないことが先ですね。僅かでもそのような素振りを見せれば、スザクは気付きますから。私やスザクと関わらないで居る限りは、お好きになさって下さい。けれどこの約束のいずれかを破れば、スザクが手を下すか、或いは、社交場に出られない顔にして差し上げますよ」
 にっこりと、見目麗しい笑顔で少女は語る。
 引き攣ったのは男の喉仏だ。
 少女――ルルーシュ・ランペルージ。彼女は非常に有名だった。武術の天才と噂される枢木スザクを常に従えている、ということもあったが、それさえも実際はルルーシュの一部にしか過ぎない。むしろスザクもまたルルーシュに『取り込まれた』1人なのだと言うのが、罷り通った噂だ。
 端麗な容姿を駆使し、甘い言葉を紡ぎ男を惑わす。その先にあるのが極上の蜜なのかどうかは誰も知らない。惑わされた者の大半が枢木スザクの制裁を下されるならまだ易しい方で、ルルーシュ本人によって地獄に落とされる。と、言われるのが専らだった。
 彼女は見目が麗しいだけでなく、頭脳も明晰だった。それは表面的なものではなく、人を陥れるという点でも抜きんでていた。例えば盤上のゲームで負けたことはない。多くの貴族と対面し、良からぬ噂をこぼさず耳に入れる。貴族のネットワークは複雑且つ緻密で、普通は見抜けるものではないのに、彼女は情報の精査と関係性の洞察力に非常に優れていた。故に、多くの人間の弱みというものを握っていた。彼女が言う「社交場に出られない顔」と言うのは、即ち貴族社会での顔を潰すという意味だ。
 そのようなことがこんな少女に可能なのか。――可能だった。
 彼女には何か巨大なバックがある。というのは、ここ最近まことしやかに囁かれている噂だ。彼女はそれさえも利用し、気に入らない人間を破滅させることができた。
 男たちは、単純に遊びのつもりだった。
 取り澄ました容貌の彼女を良いようにしたいという男の性だ。彼女に纏わる噂を耳にすれば、一層好奇心は沸いた。どんな大層なものかと思えば、彼女も簡単に男たちの思惑に乗った。最初は賭ゲームだった。男たちは惨敗した。プライドを傷つけられ熱り立った男たちは、数の暴力で彼女を支配しようとした。
 火のないところに煙は立たない。
 裏庭に連れ出した彼女に手をかけようとした瞬間、どこからともなく降ってきたのが枢木スザクだった。彼は男のひとりを易々と気絶させ、彼女はそれを当然のように見ているだけだ。それはまるで詰まらない日常の光景を見るようなものでしかなく。
 男のひとりが言う。だから言ったんだ。この女はヤバいって。噂は本当だったんだって。彼女は男たちの畏怖混じりの狼狽に微笑む。
「早く行かないと、スザクに『お願い』しますよ?」
 それが決定打だった。男たちは気絶した男を抱え上げ、悪態をつきながら去っていく。畜生、覚えていろよ、と言う声が聞こえたが、彼女はその一切の余裕を崩すことはなかった。



「………ルルーシュ」
 低い声が発せられる。怒りを隠さない音にルルーシュは上機嫌に笑った。それがさらにスザクの癪に障る。
「いい加減にしろよ、お前。今日だって、オレが居なかったらどうなってたと思う」
「お前は来たじゃないか。問題ないだろう」
 殺していた怒りが噴出する。そもそもスザクは苛立っていた。腹が立っていた。ルルーシュに、彼女に手を出そうとした男たちに、結局ルルーシュを助けてしまう自分に。
「お前はいつだって私を助けてくれるよ、スザク。何が起ころうと、どれほど私が憎かろうが、お前は私を助けざるを得ない」
 甘い毒が紡がれる。スザクを蝕むのはルルーシュという毒。彼女そのものが、スザクにとっての胎毒。
「違う。オレは、お前なんて、助けたくない。お前が好き勝手にやっているのに、どうしてオレが付き合わなきゃならないんだ」
「そうだよスザク。お前が私を守る必要なんてない。私が勝手に男を誑かそうが、それは私の不徳だ。どうしてお前がしゃしゃり出てくる必要がある? 私はお前に助けてなんて一度も頼んだことはないよな?」
 ゆるゆるりと、笑みは酩酊感に酔っていた。うっとりとまるで恋人を見るようにスザクを見つめている。
 女の粘ついた視線に晒され、喉が渇く。ルルーシュの声が煩わしかった。欲情していた。それを全て見透かしたルルーシュは、紅い唇を開く。
「いいよ、スザク」
 許しの言葉を聞き入れる前に、体は動いてた。忌々しい言葉ばかりを吐く唇に噛み付く。舌は容易に絡み、せめてとスザクは彼女の咥内を蹂躙した。息をする隙間も与えないよう、溢れ出す唾液も全て零さないよう。
 力が抜けそうなルルーシュの体を壁に乱暴に押しやった。脚の合間に、スザクの体が割入る。彼女の自由を奪い、なぶる。
 ルルーシュの抵抗は一切なかった。それはスザクの行為を受け入れているからであり、男の力に抗えないからであり、これがスザクへの褒美と餌と自身の望みであるとしているからだ。
「……ここで、する気か?」
「黙れ」
 ルルーシュの制服の中にスザクの手が入り込む。直接、肌を撫でる。腹を手の平でなぞり、臍を指でなぞった。くすぐったいのかルルーシュは僅かに身を捩ろうとするが、スザクに抱え込まれた体勢では何の変化もなく、逆に脚の付け根をスザクの体に摺り合わせるようにもなった。それがルルーシュの意図したことなのか、スザクにはわからない。が、今にも欲しい女の体とより接触して、昂ぶらないわけがない。ルルーシュの制服は着崩れ始めていたが、その中でなおスザクの手は動きを止めない。下着の上から胸を潰せば、ルルーシュの体が条件反射のように僅かに逃げを打つ。それを追い詰めるようになお口付けを深める。
 裏庭だ。屋外だ。
 建物の影からは、唾液の重なる水音と呼吸を求める声が漏れる。
 第三者に見られる可能性は大いにあった。それでもルルーシュがほとんどスザクを止める気配を見せなかったのは、見られて困るのはルルーシュではなくスザクだという余裕があったからだろうし、実際にルルーシュはこの場を誰に見られようと気にはしないだろう。スザクは、無論このような場面、誰ともなく見られるのなんて御免だった。すでに体の方は反応も始まっている。けれど外、しかも学校内で事に及ぶつもりなんてさらさらない。それこそ、ルルーシュの思う壺だ。
 苛立ちが再び浮上する。
 それを誤魔化すかのように、ルルーシュの首もとに強く吸い付いた。ほとんど噛んだも同然だった。
「っ……少しは、気は収まったか?」
「…………お前が憎いよ、ルルーシュ」
 ああ、とルルーシュは答える。
「でもお前は私がお前でない男に支配されることが嫌だろう? 私が他の男に抱かれるのも、触れられるのも」
 ふふっとルルーシュは面白そうに笑う。スザクは否定の言葉を何ひとつ持たない。
「お前は私をお前でない男に譲ることができない」
 ルルーシュの唇が横一文字に締まったスザクの唇を食む。
 例えば、このルルーシュの愛撫を、スザクでない男が受ける。
 例えば、この薫りたつルルーシュの体を、スザクでない男が組み敷く。
 例えば、ルルーシュがスザクでない男に想いを馳せる。甘い言葉を囁く。頼る。
 考えるだけでも、身の毛が弥立った。
 ルルーシュの傲慢な支配から解放されるのは、実に簡単なことだ。スザクが、ルルーシュから放れればいい。スザクがルルーシュを捨てればいい。ただそれだけのこと。ただそれだけのことがどうしたってできない。ただそれだけのことを決心できず、今なおこうしてルルーシュにいいよう遊ばれている。
 もし、スザクがルルーシュから離れれば――おそらく、ルルーシュはスザクでない男を再び従えるだけだろう。
 ルルーシュにはそれだけの魅力があり、本人がそれを望んでいる。彼女が欲するのは、快楽と悦楽と、己の心を満たすものだけだ。
 本当はルルーシュがスザクをいつ捨てたっておかしくない。けれどルルーシュはスザクを捨てることはない。スザクの腕っ節はルルーシュにとって非常に役に立ったし、体の関係もスザクに満足していた。
 スザクが離れない限りは、ルルーシュは他の男を従えないし、他の男に体を許すこともない。そうしてルルーシュはスザクを支配する。
「私はお前を愛しているよ、スザク」


 これが愛ならば、残るのは破滅だけだ。




40. 君に殺されるならそれも良いかと、少しだけ本気で思った。




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エスでエムでエスなおんにゃのこルルーシュとエムでエスでエムなスザク。
のつもりだったけど中途半端。
にょたいである理由は単純に男であるが故にスザクはルルーシュを完全な意味で虐げられないしルルーシュはそれをわかって女であることをひけらかしてると言うだけのことですね。おのこルルーシュ相手にスザクが手加減する理由が見当たらなかった。
きな子/2009.10.12