・ルルーシュもスザクもおんなのこです
・背後関係とか全部ごっそり省いちゃってます
・いろんないみでひどいです
・主にスザクのキャラが崩壊してます
・スザクは完全に女の子言葉ですルルーシュは口調は変わらないけど髪は長いです
・多分救いがないと思われます
・少しでも危険を察知したら回避した方が良いと思われます
・でも期待できるほど百合っぽくもないです
・要は書いてみたかっただけなんです
・それでも読んでみるならずずずいっと下までスクロール
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屹と睨む瞳が彷彿させるのは、極上の至石。
意思の透った色が燦然と輝き、彼女という人が世界でどれだけ稀有な存在かを知らしめる。
本当に、綺麗。
綺麗で、可愛い。
本当に、可愛い。
「ルルーシュ」
大切な宝物みたいな名前。喉を鳴らすだけで全身から弥立つ歓喜。
彼女はどんな表情だって素晴らしい造形美のようだけれど、苛烈なまでの感情は一際彼女の為人を際立たせる。女のヒステリーは醜いものだと思うのに、彼女に限っては当てはまらない。元来の気高さと、矜持の高さ。彼女が乱れれば乱れるほど、満たされる支配欲。
怒りに満ちた瞳はただ一人だけを映し、彼女の世界を支配することの酣酔感。
そ、と柔らかく瑞々しい、ほんのり赤みのある頬に手を伸ばして、指先を触れてみた。ら、ぱんっ! と跳ね除けられた。
あ、ちょっとこれ悲しい。
「ルルーシュ、いたい」
「お前は……ッ!!」
力の限り抱き締めれば折れてしまいそうに頼りないのは、細い肢体。必死に自制しながら睨み上げる姿が、憐れでとても愛おしい。
そんな風に思われていることなど欠片も気付いていないだろう美しい人は、堪えきれない情を持て余しているように微かな震えを見せていた。
これだからとても愛おしいのだと。矢張り彼女が気付くことはないに違いない。
※
「ルルーシュ、何を怒っているの?」
きょとん、と。首を少し傾げる姿は、いつも見せる顔。それが余計に腹立たしさを増幅させることをまるでわかっていながらやっているように見えて、かっ! と頭に血が昇った。
「何をだと?! っ、お前はいつもそうだ…! 我が物顔で俺のやることなすことを監視して! そんなに俺の行動が気に食わないのか?! しかも気に入らなければ力でねじ伏せる! お前は子供の頃から何も変わらない…っ」
「ルルーシュ、落ち着いて? さっきのことを怒っているの? でもルルーシュ。ルルーシュ、ひとりでどうにかできた? ルルーシュは優しいから、2人っきりで、って言われたら大人しく着いていってあげるつもりだったんじゃない? だめよそんなのあぶない。ルルーシュはキレイなんだから、ふたりっきりになんかしたら何されるかわからないわ」
「だからって、あんな…っ!!」
ひとつ下の男子学生だった。ずっと先輩に憧れていたんです、と告白する顔はとても緊張に強張っていて、震える手で差し出された手紙を簡単な気持ちで受け取ることは躊躇われた。気持ちは嬉しいけど、俺は君のことをよく知らないし、そういう対象を作る気はないんだ。正直に吐露したら、彼はならばこれから自分のことを知っていって下さいと言ってきた。手紙を渡す手は震えていたのに、気持ちを真っ直ぐに伝えてくる少年は、逃げてばかりの自分には眩しかった。こんな女のどこがいいんだ、とも思った。ごめん。君の気持ちには応えられない。彼のためにこそ、はっきりとそう言うつもりだった。口を開きかけて、手にしていた彼からの手紙を奪われるまでは。ビリビリに破いて、散らすスザクを見るまでは。
「だってあの子、嘘くさかったもの。それにあの子のお友だちもあんまりいい噂聞かないし。いーい? 男は狼なの。絶対に信用しちゃダメ。どんなに潔白を装ってもその面の下はろくでもないことしか考えていないんだから」
スザクの言葉は呪いのようだった。
刷り込むように、囁きかけてくる。男はダメ。信用できない。だってルルーシュはキレイだもの。キレイだから。キレイじゃないとダメ。だから私が守ってあげる。私が守るの。
もう、耐えられなかった。
「ルルーシュ?」
「ッ! さっさわるな!!」
ぱしんっ! と、先ほど指を払われた時よりも更に強く跳ね除けた。咄嗟に全身で示した拒絶に、翠緑の双眸が見開かれる。
「ッ…」
瞬間、傷付けた、と思った。
スザクを傷つけてしまった。
固まってしまった自分に何を思ったのか、スザクは優しく笑う。
(あ…っ)
謝らなくては。謝らなくては。でも先に無体を強いたのはスザクなんだから、これくらいのこと。でもスザクを傷つけてしまった。それとこれとは話が別だ。謝らなくては!
「スザ…っ」
「うん、ごめんね? ルルーシュ」
そっと撫でられた頬。温かい。労るように。離れてしまった手は。
違う。謝らなくてはならないのは俺の方だ。なのに、スザクは、いつも、いつも、いつも。
「っ、どこ行くんだスザクっ」
「今日は、カレンかシャーリーのとこに泊まらせてもらってくるわ。少し、頭冷やしてくる」
「っスザク!!」
「おやすみ、ルルーシュ」
ぱたり、閉じられてしまった扉。取り残された、自分。
(この、空しさは何だ?)
スザクはいつも勝手だ。勝手にこちらを縛っておきながら、勝手に手放して。自分の意見など聞いてくれやしない。
(俺は)
ただ、スザクと対等でいたいだけなのに。
甘やかされて、惜しみない愛情を注がれて、守られて。どんどん駄目になっていく自分がとても怖い。その恐怖を、八つ当たりという形でスザクに押しつけた。
(最悪だ……っ)
スザクの居ない部屋は広い。そして冷たい。
振り切るようにルルーシュは立ち上がって、シャワーを浴びた。冷えた体に温度の高い湯は心地よいくらいに肌に染み渡る。なのに直ぐにその熱は体から霧散してしまう感覚だった。
ふと、鏡に映った頼りない、細く白い女の躯に、情けなくて泣きたくなった。
翌日、スザクはひとりで登校した。
カレンかシャーリーの所に泊まったんじゃないのか。先に来ていた2人に聞いてみたが、2人とも揃って首を横に振った。
「スザク? 私の所には来てないわよ」
「なあに? またルルとスザク君、喧嘩したの?!」
ち、違う、とどもってしまったけれど、恐らく友人2人にはバレバレだっただろう。追及はしてこない2人の優しさに感謝する。
それにしても友人の所に泊まらなかったと言うなら、スザクは昨日の夜どこにいたんだ? ざわりと波立った胸の内に、ようやく登校してきたスザクに思わず駆け寄った。
「スザク!」
「おはよう、ルルーシュ」
「お前、昨日はどこに…っ」
「うん? それよりルルーシュ、もう先生きちゃってるわ。早く席に座らなきゃ」
「っ」
ギリギリに登校してきたスザクは、ほぼ同時に教師も入ってきて。さすがにこれでは話も聞けず、渋々ながらルルーシュも席に戻る。ばいばいと手を振るスザクの態度はいつもと何ら変わらないもので。
違和感だけが募った。
――どうしてか、こういう日に限って悉くタイミングが合わない。
休み時間、スザクに話しかけようにも、スザクか或いは自分がクラスメートや教師に掴まってしまう。10分という短い単位ではそれだけで終わってしまって、スザクと話す機会が得られずに結局昼休みにまでなってしまった。
「………シャーリー。スザク、どこ行ったか知らないか?」
そして気が付けばスザクは教室のどこにも見あたらなかった。
席の近いシャーリーに聞いてみたが、彼女もいつの間にか消えてしまったスザクには気付かなかったようで。
何かあったの? と心配そうに聞いてくる友人に、やんわりと何もないよと答えて席に戻った。シャーリーは大切な友人だったが、今の自分の自分でもよくわからない気持ちを吐露するには躊躇われた。特に、スザクに関しては。
(…避けられてる?)
まだたった半日。話せないと言うには短すぎる時間。だけれど昨日のことがあったせいで、そんな予感が過ぎってしまう。
ただの気のせい、勘違いだ。頭を振って、嫌な考えを振り落とす。
いつもなら前の机を陣取って一緒に昼食を食べているスザクがいない。それだけだ。
ルルーシュはご飯を突きながら、ふと窓に目をやる。裏庭側に接する教室から見える風景には人気がない。校庭が見えれば昼休みを謳歌している生徒が溢れていただろうが、あいにくと目に入ったのは野良猫が一匹だ。
…と、思っていたら、ふと奥の方に人影が見えた。
「?」
珍しい。裏庭は校舎から回らなければならないし、特に部活で使っていることもないから近付く生徒は殆どいない。かろうじて庶務の人間がたまに掃除に立ち寄ってるくらいだ。が、ルルーシュが見た人影は数人。それも制服を来た男子生徒が数人と、女子生徒がひとり――その、頭部を確認して、ルルーシュはがたん! と席をたった。
見慣れた茶色。癖っ毛の強いそれを肩にかかる程で持て余している。そんな特徴的な髪型、この学校に二人はいない。しかもルルーシュが、ずっと一緒にいた幼なじみの姿を例え一瞬でも見逃すわけもなく。
(っ…スザク?!)
数人の男子生徒に、まるで逃げられないように脇を固められて連れられていく格好。よくよく見ると、腕も掴まれている。
(あのバカ…っ、何で)
スザクの体術の腕前はルルーシュが一番よく知っている。いくら体格のよい男子生徒でも、スザクはその小柄な体で投げ飛ばしてしまえる力があった。が、いくらスザクが強くとも、相手は数人。――それにスザクは、自分と同じ『女』でしかなくて。
(ッ……バカは俺だ!)
守られてばかりいて、盲目になっていた。甘やかされてばかりいて、勘違いしていた。スザクは自分と同じ女。ふと、昨日のスザクの言葉が耳に蘇る。
『それにあの子のお友達もあまりいい噂聞かないし』
スザクの脇を固めている生徒をルルーシュは見たことがない。二年目となれば同学年の顔は大方把握していて、数人組みの顔をひとりも見たことがないというのは、即ち他の学年。年上にしたら、顔立ちが幾分か幼い。ならば。
「ッ……」
ルルーシュは半分も食べていない弁当箱を慌てて片づけた。クラスメートがいつもにないルルーシュの態度に不躾な視線を向けていたが、そんなものに目もくれずルルーシュは裏庭に走った。
※
(………ろくでもない奴ばっか)
自分が逃げないようにと掴んでくる腕をいい加減に放してほしい。気分が悪い。こんな風にしなくたって自分は逃げないのに。そもそもこんな連中に従うほど、スザクは弱くはない。その気になればこんな腕、容易に振り切って囲んでいる連中だって伸してしまえる。
(ほんとう、ばかみたい)
スザクは俯いて相手には見えないのをいいことに薄く笑う。
彼らは数人で寄ってたかってスザクの動きを封じていることに優越感でも感じているのだろうか。武道家として名が知れているスザクも、所詮はただの女子生徒。数人で囲うという卑怯なやり方で、大人しく従ったスザクをやりこめたとでも思っているのか。
(だとしたら、このままもう少し大人しくしてみるのもまた面白いかな)
再び暗い笑みを口元に乗せたスザクだったけれど男子生徒たちはそれには気付くことなく、完全に人目につかない所まで連れてきたスザクを乱暴に放した。
(紳士さの欠片もない)
あったところで、スザクが彼らの評価を上げるというわけでもないのだけれど。
「センパイ、昨日はどうも」
「……あら。昨日は随分とショックを受けていたみたいだけど、だいぶ元気そうね?」
なら、良かった。にっこりと笑顔を向けるスザクに、男子生徒(昨日、ルルーシュに告白をした一学年下の生徒だ)もまた、微笑みを返す。
「ショックでしたよ。ルルーシュ先輩の返事をもらう前に、僕の手紙は紙屑になってしまったんですから」
「ルルーシュは君の気持ちには応えられないと言ってなかったかしら?」
そうでしたか? すっとぼけるにしてはあまりに白々しい態度で、いっそ清々しい。スザクはそんな相手の白には関知せず、「それで私に何か用?」と少し困ったような苦笑混じりに聞く。
「用というか、ひとつ確認したいことがあるんです。あなたは、ルルーシュ先輩の何なのですか?」
「どういう意味かしら?」
「ただのオトモダチなら、干渉し過ぎなのではないですか?」
うっすら笑いを浮かべながらの少年の忠告に、スザクが覚えるのは愉悦感。十数年ルルーシュと一緒にいるスザクに対して一年同じ学校(中学は知らない)に居るだけの少年が忠告するなんてそれこそお門違いとも言えたが敢えてスザクは口にはせず。
「なら、ただのオトモダチじゃないとしたら?」
スザクのベビーフェイスは甘い笑顔がよく似合う。キャラメルブラウンの癖っ毛がほろりと揺れると妙な色香を放ち、それをスザク自身も自分の魅力として理解していた。が、少年はそんなスザクに頬を染めるどころか、不快そうに眉間に皺を寄せている。
(失礼しちゃう)
予期していた反応には満足。人の顔を見てその態度は純粋にただ不満。
「枢木先輩がそんな風だと、ルルーシュ先輩もいい迷惑じゃないんですか?」
それこそ部外者が口を出すのはお門違いだ。
弧を描いたまま開こうとした唇から、しかしスザクの声が発せられることはなかった。
「そんなことは俺とスザクの問題だ。他人にとやかく言われる筋合いはない」
背後から突如として割り込んできた涼やかな声に、スザクは特別驚きはしなかった。
裏庭に続く道は確かに人気がなかったけれど、階上の教室からならば目の届く範囲だ。さらにルルーシュとスザクはいつも窓際で昼食を食べていたし、ルルーシュ一人だったとしてもそれは変わらない。一人ならばなおさら、外に意識は向きやすい。時間だってちゃんと確認した。
ここにルルーシュが居ることは、スザクにとって必然でしかない。が、一学年下の男子生徒はまさかの人物の登場に、目を丸くして動揺していた。その様子がまたスザクは可笑しくて仕方がない。
「ルルーシュ、先輩……」
「昨日の件はすまないことをした。お…私にも落ち度がある」
「……そんな、ルルーシュ先輩が頭を下げる必然なんて、」
「いや、曖昧な私がいけなかったんだ。君の気持ちに応えることはできない。だから――」
そういって、ルルーシュは視線をスザクの腕を掴んでいる生徒へと向けた。その視線は伶俐な物で、スザクの動きを封じている男子学生の腕を冷たく汚らわしい物のように見ている。その様子がまたルルーシュの潔癖さを示していて、スザクはそんなルルーシュをまた好ましくも思う一方。
「その手も、放してくれないか?」
(そんな顔、見せてやる必要ないのに)
もったいない、と内心で舌打つ。いらっとした気持ちからか、弛んだ力から乱暴に男子学生の手を払った。そのスザクの動作を見て、ルルーシュはびくりとほんの僅かだけれど(気付いたのはスザクと正面でルルーシュを凝視していた少年くらいのものだろう)反応する。その反応に、ささくれ立っていた気持ちも少し波が引く。目があったことでルルーシュの眉が痛ましげに寄って、スザクは微苦笑をルルーシュに見せてやった。こんなことは何でもないのよ、と、わざと見せつけて。
「ルルーシュ先輩、あの…っ」
「どうして君がスザクをここに連れてきたのか、その訳は聞かない。だが、またスザクをこんな多勢に無勢みたいな形で連れていくようなことがあったら」
ルルーシュは、綺麗だ。
柔らかく笑う姿は春の日溜まりを彷彿させるし、怜悧な瞳を眇めて思考に耽る姿は丹精に作られた人形のような印象を与える。
しかしスザクが殊更ルルーシュを綺麗だと感じる瞬間は、いつも彼女が抑え切れない感情を持て余す時だ。怒りや苦悩、時に愛情や寂漠。紫水晶は輝きを増し、自分では制御できない感情に翻弄されるその瞬間。ルルーシュの本質がとても綺麗だからだ。だから彼女が懸命に装っている仮面が剥がれた時に見せる表情を一瞬たりとも見逃したくはなかったし、自分が独占すべきものだとスザクは思っている。
そうして、いい加減認めればいい。彼女はスザクのもので、自分はルルーシュのものなのだと。
「俺が許さない」
スザク、と名前を呼ぶ姿は、先ほどまでの毅然さは残っているのに、どこか頼りないものだった。ルルーシュがスザクに対して強がりを張るのは別に珍しいことでもないが、その殆どは虚勢にしかならない。今も必死にスザクを見つめているのは、そうしないと弱い自分が溢れ出てしまいそうだからだ。ルルーシュにとってスザクは唯一弱みをさらけ出してしまう相手だからこそ、絶対に弱みを見せたくない相手でもあった。
昼休みが終わるまではあと5分程度しかない。今から急いで教室に戻らなければ午後の授業には間に合わない。
(五限はサボり決定)
スザクは心の中で算段。ルルーシュは時間が差し迫っていることには気付いていなかったのか、予鈴が鳴ってこそはっとしたがスザクが気にした素振りを見せない様子に授業は諦めたのだろう。ルルーシュがスザクを呼んだものの、また当惑気味に黙ってしまってから2人の間の沈黙が破れたのは、本鈴が鳴ってからだった。
「ねぇ、ルルーシュ」
それまでルルーシュが何か言うのを待っていたスザクは、埒が明かなかったのか痺れを切らしたのか、それともルルーシュが追い詰められたのを見計らったのか、呼ばれたルルーシュはビクリと体を跳ねた反応を返した。そんな反応が気に入ったのか、スザクは笑みを広げながらルルーシュの頬に手を添える。
「ねぇ、ルルーシュ。私はルルーシュの側に居ない方がいい?」
「………な、に?」
壊れ物の形をしっかりと確かめるよう、緩やかにルルーシュの頬を愛撫する。スザクの言葉に、ルルーシュは驚愕の表情。
スザクの手はルルーシュを逃さないよう動くのに、声はルルーシュを突き放す。
「私がルルーシュの側にいると、ルルーシュの邪魔になるんじゃない? ルルーシュが嫌がるなら、私はルルーシュの側には居られないわ」
あくまで主導権はルルーシュ自身にあるのだと言われて、その言い方は卑怯だとルルーシュの顔はくしゃりと歪む。どこまでもスザクは自分勝手だ。いつだって柔らかな物言いでルルーシュを翻弄する。
「お前は…っ」
「私はルルーシュが好きよ」
言われて、ルルーシュは、はっとスザクを凝視。いつの間にか頬に添えられていた手は離れていて、スザクは穏やかに笑いながら告白をした。
好き。
頭の中に浮かぶ二文字。
「好きだからルルーシュの側に居たいと思うし、きっとこれからもルルーシュの邪魔をしてしまう。でも、ルルーシュが嫌なら私はルルーシュの側には居られないわ」
だってルルーシュが好きなんだもの。ルルーシュには幸せになって欲しいもの。そんなこと、当たり前でしょう?
紡がれる甘い言葉。柔らかな笑顔。これは優しい毒だ。
(どうして)
ルルーシュはじわりと自分の目元に涙が浮かぶのを自覚する。感情が擦り切れそうな感覚だった。
(どうしてスザク、お前は)
そしてスザクは、また「ごめんね」と言って、ルルーシュの前を去ろうとする。まるで昨日の再現のように。優しく真綿でくるむようにして、ルルーシュを縛り追い詰めて行く。
(違う)
そうして、スザクは誰か他の男の元へ行く。女という体を男に差し出す。心はルルーシュの物にしたまま、スザクは。
(それが嫌なのは誰だ? 嫌だったのは、誰だ?)
昨晩、スザクは帰ってこなかった。シャーリーやカレンの部屋に行ったわけでもなかった。ひょっとして、と思ったのは今回が初めてのことではなかった。こんな風にルルーシュに匂わせながら明確な形にはせずに、ルルーシュに選ばせる。
「っ……」
ならば、ルルーシュには選ぶ自由などはなかった。選ばざるを得なかった。それはとうに選んでいたと言うことに他ならない。
「――スザク!」
去ろうとする背中を追いかけて、振り返った瞬間に抱きついた。細い身体なのに、ルルーシュの勢いにスザクが押されることはない。バランスを崩すこともなく、いとも容易くルルーシュを抱き止めたスザクは、耳元で「ルルーシュ?」と囁く。
「……無理、しなくていいのよ?」
スザクの声にルルーシュはふるふると押しつけた顔を横に振る。
「ルルーシュは優しいから。私に同情でもしてくれた?」
それもルルーシュは首を振って否定する。スザクからルルーシュの顔を見ることは叶わない。柔らかな黒髪がスザクの頬と首を擽るだけで、後はルルーシュが回した腕の強さと、押しつけられた体の体温だけが頼りでしかなく。何も言わずにただスザクを抱き締めるルルーシュの背中に、スザクは少し経ってから腕を回した。そうすればルルーシュがスザクを抱き締める力はまた少しだけ強くなる。
「……ルルーシュ、泣いているの?」
ビクリ、と、ルルーシュの身体が跳ねた。宥めるように、スザクはルルーシュの背中を撫でる。
ゆるりと力が弛んだルルーシュの腕はそのままスザクの両肩に乗せられ、伏せられた顔は伺えない。
「ルルーシュ、顔、見せて…?」
耳朶を唇で柔らかく愛撫しながら囁きかければ、ルルーシュは大人しく従う。目尻には涙が溜まっていて、零れるのを今かと待っている。スザクはその表情を焼き付けるように見つめてから、ルルーシュの目元を舐めた。一度、ルルーシュが目を伏せれば、溜まった涙が一筋流れる。両の眸から流れるそれを掬ってから、合図のように鼻先にキス。涙で濡れた瞳を再度開いたルルーシュは、どこか扇情的な色がある。紫は崇高な色とも言うけれど、ルルーシュを見ているといつもそれを実感する。
「ねぇ、ルルーシュ。ルルーシュは、私のことが好き?」
スザクの問いに、ルルーシュは緩く首を振る。
「わからない」
曖昧な答えに、スザクは何も追求しない。その代わり、真逆の問いを尋ねる。
「じゃあ、私のこと、嫌い?」
「そんなわけない!」
はっきりとされた否定に、今度は満面の笑みを浮かべた。嬉しい、とルルーシュに告げれば、ルルーシュはまた泣き出しそうに顔を歪める。
可哀想に、とスザクが思ったのは、その泣き出しそうな顔があまりに綺麗だったからだ。そんな風に煽るから、スザクはいつもルルーシュを追い詰めたくなる。
ルルーシュがスザクのことを切り捨てられるわけがないと知っているから、スザクはルルーシュを追い詰める。もうずっとずっと前から。おそらくルルーシュと出逢ったその時から。
スザクにとって、世界はルルーシュが全てだった。
「……俺は、お前のことが、好きだ。でも、お前と同じ意味でお前のことが好きか、わからない」
弱々しく告げられるルルーシュの告白。
スザクの顔を見ながらでは言えないのだろう、視線を逸らされながら告げられるそれをスザクは恍惚とした笑みで聞いていた。それに気付くことなくルルーシュは辿々しい口調で続ける。
「でも、お前が俺の側から居なくなるのは嫌だ。お前が……誰か他の奴のものになるのは、嫌、だ」
次第に弱くなっていく語尾はルルーシュの心。きっとルルーシュの本能的な怯えは正しい。このままスザクに絡め取られてしまえば、いずれルルーシュは後悔することを察している。それもそのはず、ルルーシュもスザクも女で、まだたったの17歳で。でもスザクは最初からルルーシュは自分のもので自分はルルーシュのものだと思っていたし、ルルーシュもそうなるように仕向けた。
もう観念すればいいのに。そう思いながら、スザクはルルーシュに毒を流し込む。
「私はルルーシュのことが好きよ。ずぅっと好き」
――だから、ねえ。
ただ、触れるだけ。そっと、付くか付かないかもわからないくらいに、ほんの一瞬。それでも触れ合った水々しい唇は互いのそれに吸い付き、離れた。
「ルルーシュが嫌だと言うまで、傍にいても良い?」
ルルーシュの双眸が揺れる。うんともいやとも言えない彼女は、結局のところスザクから逃れられないという証のようでもあって。
そうしてスザクは、またひとつルルーシュという人を手に入れる。
その事実を確かめるようにルルーシュをやんわりと抱き締めれば、抵抗する術を知らない仄かな温もりがスザクを受け入れた。
(ずうっと、私が愛してあげるから。ルルーシュ)
愛ばかりが募る心を、スザクは真実愛だと疑うことはなかった。
35. 君がいた証なんていらないから、君自身が此処にいて
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苦情は心の中にそっとしまって頂けることを切に願います。因みにこのルル子にはロロとナナリーという弟妹がちゃんと居ますよ
と一応。
きな子/2008.10.19