力が欲しいか。全てを変えられる力が。
「欲しい」
 王の力はお前を孤独にする。それでも?
「欲しい」
 ―――ならば、お前に力を。



「…………」
 暗いその室内は、上質な調度品があてがわれた部屋であった。机に椅子、寝具といったものから、帳に施されたきめ細かい刺繍。至る所まで手入れをされたその部屋は上等なもので、ここに住まう人間の身分を証明するような造りになっている。
 その部屋の窓際。ひとり立つ青年は片目を押さえる。
 隙間から覗くのは、月明かりに照らされた紫闇。深く、高貴な色とされるその色は、純度の高い紫水晶のよう。
 ゆるり、と彼は手を下ろした。
 その直後、こん、と扉を叩く音。一拍置いて、彼は「はい」と応える。
 その返事を聞いてから、扉は開かれた。
「ルルーシュ?いま、へいき?」
「……ああ、大丈夫だよ、ユフィ」
 ひょこり、と顔を覗かせた少女に、彼は笑みを向ける。慈しみを含んだそれには、陰りも偽りもない。
 少女は「電気、消してどうしたの?」と、スイッチをオンにしてから室内に足を踏み入れた。暗かった部屋は、あたたかさを得たように明るくなった。
「さっきまで寝てたんだ」
「え?私、起こしちゃった?」
 慌てる少女に彼は「いや、」と優しく応える。そうすれば少女は、ほっとして、嬉しそうに、青年の腕に自分の腕を回した。
「ユフィ?」
「お夕飯、一緒に食べましょう?ルルーシュ。お姉様やお兄様方もルルーシュを待ってるわ」
 ね?と可愛らしく見上げ首を傾げる少女に、青年は少し困ったような表情をしながら口元を緩めた。
「姉上や兄上をお待たせしてるのか?」
「だって、ルルーシュってばそうしないと来てくれないじゃない。今日はシュナイゼルお兄様もご一緒できるって言ってたから、早く行きましょう」
「……シュナイゼル兄上も来られるのか?」
 驚く青年に満足したよう、少女は満面の笑みで頷く。
「ええ。今日はお姉様とお話があったみたいで、まだ時間もあるからって。なら、ルルーシュも誘ってみんなで、という話になったの」
「…なるほど」
 得心がいった、と頷く青年に少女はにっこりと笑う。だから、と言って少女は青年の腕を引いた。
「早く、行かないと」
「……ああ。兄上たちをお待たせるわけにはいかないな」
 腕に絡んでいる少女の頭を一度撫でる。少女は擽ったそうに身を踊らしながらも、彼を急かすよう腕を引いた。それに引かれるまま、青年も歩き出した。

 部屋の明かりを再び落とし、扉をゆっくりと閉める。

 誰も居なくなったはずのそこで、影がひとつ動いた。
 暗がりの中、ライトグリーンの髪が窓から差し込む月明かりに照らされる。怜悧な瞳を閉められた扉へと向け、ひっそりと現れた少女は沈黙を保つ。
「………」
 足音はとうに聞こえない。静まり返った室内で、彼女はただ扉を見つめる。…が、不意にその視線を移した。
 月を臨む、夜空へと。
「……契約は結ばれた。あの男の望みはただひとつ」
(この国の破壊。全ては唯一の肉親となった今は遠い地で生きる少女に優しい世界を与えるが為に。)
「―――殺すか、真実を」
 左目に宿した王の力で、彼は何を行使するつもりであるのか。
 最後の晩餐に相応しい月夜だとぼやきながら、少女はくつと喉を鳴らして笑った。



03. 自分の為なら、いくらでも平気で真実を殺せるよ




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続かない。ナナリーと離れ離れにされルルーシュはひっそりと兄姉の庇護下に居たけれど、ギアスを手に入れて反逆予定。手始めに兄姉たちをどうにかしようと企んでる。そんな感じ。
でも結局は身内に甘いルルーシュだから兄姉は殺さないよ。自分を忘れさせるとか、そんなだよ。温すぎて反逆にもならない。
きな子/2007.06.08