「見つけましたよぉ、殿下!」
画面一杯に満面の笑み。それが彼の喜びと共に自分の思惑が叶ったことを示しており、シュナイゼルもまた画面の人物に向かって笑った。
「やはり君をエリア11に向かわせたのは正解だったね、ロイド」
「あはぁ。ええ、いろいろと役得な事ばかりでありがたいですね」
まさに一石二鳥!と諸手を挙げているロイドにシュナイゼルは綽々とした態度を崩さない。何もかもを見越したような態度が繕ってのものではなく、彼の持つ武器の一つであることをロイドはよく知っていた。
「それであの子は?」
待ったましたと言わんばかりにロイドは食えない笑み。『見つけた』経緯を話す口は軽い。
「テロに巻き込まれて偶然幼馴染みと再会したものの、現在、消息不明。どうやらアッシュフォード学園の制服を着てらっしゃったみたいだから、殿下の読みは大当たりだったってことですねぇ」
その報告を受けてシュナイゼルは考える仕草。
「……幼馴染みとは、枢木の?」
「おおあたりぃ!」
「と、いうことはロイド。君自身、あの子の姿を確認したわけではないのだね?」
その問いにロイドは態とらしく肩を竦めた。端から見れば片方は緩く微笑むばかり、片方は道化のような喋り方をするばかりの奇妙な光景だったが、本人たちはこれでしっかりと意思疎通というものはできている。だからこそ次のロイドの声が彼なりに落胆を含んでいることもシュナイゼルは気付いているしロイドもまたわかっていてやっている。
「ええ、残念ながら」
矢継ぎ早にシュナイゼルは質問を続ける。
「テロに巻き込まれて消息不明とは?」
「そのまんまですよ。どうやら枢木君が庇ったらしいんですが、気を失っちゃったみたいで」
「あの子をどうこうしようとしたものが居たと言うことかい?」
「それが不思議なことに一個小隊が全滅しちゃってるらしいんですよぉ」
不思議、不思議、とロイドは繰り返す。ロイドの呟きにもシュナイゼルは耳を貸さず、「それでは、」と続ける。
「あの子が生きている可能性は」
「大いにあるんじゃないですかぁ?何せ、何度も修羅場に陥っては生き残ってきた方ですから」
悪運強いですねぇ、とロイドが冗談のように言えば、シュナイゼルは何故か自慢顔。何であなたがそんなに偉そうなんですか、とロイドが質問したところでシュナイゼルはやはり嬉しそうに「さぁ?」と笑う。その様子にロイドはぶすりと口を尖らせたが、シュナイゼルの次の科白に声を立てて笑った。
「それでは枢木一等兵を准尉に昇格させたいという件、了承しよう」
「あっは!飼い殺しですか?」
「人聞きの悪い。君が欲しがったのではないかね」
シュナイゼルの言葉にロイドは子供のように目を輝かせた。
「だって、彼ってば理想的なパーツなんですよぅ!ランスロットの適合率であんな数値、見たこともない!…ああ、殿下には理想のコマでしたか?」
「だから人聞きが悪いと言ってるじゃないか、ロイド。彼はあの子を見つけ助けてくれたのだから、功績としてナイトメア操縦権を与えてもおかしくないだろう?」
「これでシュナイゼル殿下直下の特派入りかぁ。黙っていれば独り占めできたかもしれないだろうに。お気の毒だねぇ」
その科白にシュナイゼルは口元をまた弛めた。否定はしなかった。
「…黒い髪に紫の瞳、か。まさか君がこの特徴の人物の捜索の命令を下されているとは知らなかったのだろうから彼に非はないね」
かなり月日経ってしまいましたけどねぇとロイドは間延びした言い方をしながら、眼鏡を一度指で押し上げた。
「ルルーシュ殿下もね。ついにチェックメイトですか」
「まだだよ。キングを追い詰めるのはこれからだ」
そうして彼らは画面越しに共犯者の笑みを浮かべた。
(……そう、これからだ)
既に彼の大切なコマの内、ひとつはこの手中は呆気なく落ちた。いくつかのコマはまだ残っているが、彼は唯一のコマを守る為に必死になるだろう。
(始めようか、ルルーシュ)
欲しいという望みなど、既に消え失せていた。その先に残された手段は、ひとつ。
―――――暗転。
01. 欲しいと望みながら、絶対に手に入れられはしないことを僕は知ってる
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初期の頃に書いた。しかし自分の中で兄は曖昧な可能性に掛けるような人じゃないと思ってるのでこの展開は没。
きな子/2007.07.18