貴方のコーヒーはいつもブラック



 アッシュフォード学園、生徒会。基本的に放課後になったら自主集合。他部活や軍での掛け持ちオッケー。緩いといえば緩いけれども、破天荒な当代生徒会長の下では如何なる時も臨機応変が求められる、有能でなければ務まらない組織である。
 して、たまーに、イベント前だとか後だとか全校集会の準備とか諸々、忙しい朝が稀にある。部活動に励む学生が朝練に訪れるのと同じ時間帯に生徒会長より召集をかけられた日には、全員出席により溜まっている仕事を片付けることが義務づけられる。
 寝泊まり可能なクラブハウスでは豆から挽いたコーヒーが出てくることなんて珍しくない。某大国の元皇子皇女(トップシークレットだ)をお世話する炊事洗濯は完璧、機関銃だって使えちゃう(これもまたトップシークレットである)スーパーメイドの出張朝ご飯はお手軽につまめるサンドウィッチが種類豊富に取りそろえられていて。それらを若干行儀悪く手に取りながら、片手で食べる元皇子殿下(であることを知っているのは約二名)は、朝から頭脳労働に追われていた。

「スザク、コーヒー」
 人に命令し慣れた声音は単純に当人の性格だろう。そしてこの場ではあまり役に立たない肉体派は、言われるがままにコーヒーを注ぐ。ついでに言われる前に砂糖とミルクをきっちり入れるのは実にできた従者の図だ。
 朝ということもあってか普段よりもずっと不機嫌そうな女王様を満足させた彼に、周囲はほぅっと感嘆。そして彼もまたコーヒーを入れてそのまま口にする姿を見て、おや? と首を傾げる一同。
「あれー? スザクってブラック派なんだ?」
「なんか意外…」
 そう? と首を傾げたのはスザクで、ルルーシュも自分の傍らに立つ男が集めている視線が気になって書類から顔をあげた。
「イメージ的にはルルちゃんの方がブラックでスザクの方がカフェオレっぽいわよねー」
「ミレイちゃん、それ頭の色?」
 あっ、確かに! と声を上げたシャーリーに、ルルーシュはため息。
「………生まれ持った色素によって嗜好が決められるのは心外ですよ会長」
「あんたたちの場合は、性格もそんな感じするけどねー」
「どんな感じですかそれは」
 間一髪いれたルルーシュの横では、スザクがあははとよくわからない笑い。それをじつと横目で見つめたルルーシュに、スザクは首を傾げる。
「なに? ルルーシュ」
 いや…と呟きながらもルルーシュの視線はスザクの持つマグカップ。因みにマイマグカップ標準装備のクラブハウスにてスザクが使っているのは、一面に描かれた黒猫のマグカップだ。
「お前、ブラックなんだな」
「え? あ、うん」
 なんか落ち着かないんだよね、と言いながら一口。
 昔はコーヒーなんて大人の飲み物だったから、まさか砂糖なしミルクなしでスザクが飲むようになっていたなんてルルーシュは知らなかった。
「朝はコーヒー飲まないとなんかスッキリしないんだよね」
「なかなかインテリだねぇスザク君」
 茶化すような声を聞き流して。
 ルルーシュは、ただスザクを見る。
 その表情は読めない。
 そして再び視線を書類に落とす。
 さあさあ早くしないとせっかくの朝一番の仕事が無駄になっちゃうわよ、という長の一言で面々は各自の仕事を再開。
 やっぱり役立たずの肉体派は、ちょっと話しかけたところで仕事の邪魔にはならない頭脳派の横に腰掛ける。
「さっき、何か言いたそうだったけど?」
 ルルーシュは手を止めない。
「昔は体内時計に頼って生きてた奴がコーヒーで朝の目を覚ましていることに驚いただけだ」
 変わったものと変わらないものと。
 成長か変化か、スザクは『変わらない』ルルーシュに苦笑い。それは俯いて仕事をしたままのルルーシュには見えない顔。
「カフェインの摂り過ぎは体に良くない。ほどほどにしとけよ」
「ルルーシュ、ピーマンは食べられるようになったの?」
「お前今度泊まりに来い。夕飯はフルコースに朝食はコーヒー要らずの日本食を食わせてやる」

 じゃあその日は良い夢が見られそうだとスザクは笑った。







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サイト内のルルーシュ甘党設定を思い出して。
一期のスザルル学園は互いに本音とか隠しながら、隠してることも滲み出てる。
きな子/2009.07.13