そうして彼らは3度目の再会を果たした。
1度目は、お互いに何も知らない、その出会いが再会だったとも知らずに。
2度目は、7年という時を経て、再び巡り合った奇跡のように。
3度目は、全てを知った、今。
初恋ラプソディア7
「………ところで、スザク。お前のところに、俺は……」
酷く、言いにくそうに。確信はあっても確証はないのだろう。
相手の出方を窺うように質問するルルーシュに、スザクは相変わらずルルーシュが突発的な事象に弱いのだと実感する。さらりと「うん、きたよ。ちっちゃいルルーシュが。」と応えれば、ルルーシュは額に手を当てて、眉間に皺を寄せた。内心大層複雑らしい。
「………その、俺は…何を言っていた?」
「え?」
覚えてないの?と聞けば、ルルーシュは「い、いや…っ」と否定しておきながらも目を逸らす。相変わらずの正直者だ。
「断片的な記憶はある。…が、…………覚えてない、…な」
何を話したのか、何を見たのか。
なんせあれだけ幼かったのだ。無理もない。
(……ひょっとして、ナナリーのことも?)
泣きながら、嫌いと口にしてしまった事実を。
もし今、思い出したら。
(……自殺しちゃわないかなぁ、ルルーシュ)
そんな物騒なことを思ってみた。
すると窺うように視線をちらちらとスザクに寄越しているルルーシュと目が合う。
「…………」
(覚えてないなら、わざわざ思い出させることもないし)
こと、当時の弱音なら尚更。
(………それに、なんか悔しい)
殆ど覚えてないと言ったルルーシュ。対して、自分もこれまで忘れていたとはいえ思い出した今、彼がやって来た時のことは殆ど覚えている。
そんな詮無いことを思ったスザクは、憶えていなくとも何かしら心配そうにスザクを見るルルーシュに、少し勿体ぶってから「秘密」と言った。
「………なに?」
「子どものルルーシュと約束したんだ。誰にも言わないって」
約束はしてない。だが、泣いたことを不安そうに見上げていた子どもを安心させるように頭を撫でたのは自分だ。信頼を寄せてくれた相手を裏切るわけにもいくまい。
そんな理屈を並べれば、ルルーシュは当然と言える反論をする。
「俺に変わりないだろう!」
「違うよ。子どものルルーシュだもん。子どものルルーシュはすごい素直で、可愛かったなー」
そう言えばルルーシュを毛を逆立てるように、さらに顔を真っ赤にして怒鳴った。
「おっお前は俺よりも過去の子どもに味方をするのか!」
「やだなぁ、ルルーシュ。僕はちゃんとルルーシュの味方をしてるじゃないか」
ね?と、会心の笑み。
そうすればルルーシュは口をパクパクと開閉させながらも、反論が思い浮かばなかったのか。
もういい!と怒鳴りながら、「そういうお前はっ!」と怒鳴りついでに続けた。
「昔からマセたガキだったんだなっ!」
「え?うーん……でもあれは、確か僕、君のこと女の人だと思ってたんだよね」
「………なんだと?」
「ほら、パジャマで居て、その後も着る物ないからってウチのお手伝いさんの着物着てたでしょう?美人なのは仕方ないけどルルーシュ、もう少し肉付きよくした方がいいんじゃない?」
「………うっううるさいっ!」
余計なお世話だ!と背中を向けたルルーシュの耳は赤い。
何だかその様子がおかしくて、スザクは声を出さないよう気をつけながらも笑ってしまった。しかし気配で笑われたことを感じたのか、ルルーシュは恨めしげにスザクを後目で睨んでいる。
ごめんごめんと謝りながらも、ルルーシュの態度は幼子を連想させるものだから噛み殺した笑いは止まらない。
無性にこの遣り取りが楽しくなってしまって、スザクはルルーシュが憤るのも構わず、咲世子に連れられてやって来たナナリーが部屋を訪れるまでずっと笑い続けていた。
………さて、このお伽噺はこれでおしまい。
子どもたちの邂逅はまだもう少し先になる頃のお話。但し、今回彼らが再会したように、一方の子どもたちが再び巡り会うことになるかは必然ではない、不確かな未来。
それはこれから紡がれることとなる。
「――― …ねぇ、ルルーシュ」
「なんだ」
「僕、やっぱり君に出会えて良かったよ」
そう言えば、ルルーシュは驚き、目を細め、笑った。そして口端をゆったりと上げ、彼は誰をも魅了する笑みで言った。
「それは俺の科白だ」
今ここにいることが幸せだった。
某方よりネタを頂戴。感謝。/ 2007.02.06