やさしい、せかい
君が生まれてきたこの日を、祝福しよう。
「ルルーシュは何か欲しいものある?」
日は落ちていた。
闇が支配する時間。辺りは静まり返り、ひっそりとしている。
ルルーシュとスザクは2人、並んでいた。並んで、星空を眺めていた。
「……お前も誕生日とか言うのか…」
「うん、勿論。だってせっかくの記念日だし。…一緒にみんなとお祝いできなかったのは残念だけど…、」
スザクは今日の授業にも放課後のパーティにも顔を見せなかった。軍務があるために、そういったことは多々ある。
ルルーシュはスザクの問いに、「欲しいもの、か…」と呟いた。
物欲はなきに等しい。
なれば。
「ナナリーに優しい世界」
僅か、逡巡。それでもよく通る声で返ってきた答えに、スザクは「……ルルーシュらしいね」と笑って答えた。
反則だったかも知れない、と口にしてからルルーシュは思う。
欲しいものはなに?
だが、今のルルーシュには…否、ルルーシュには、それ以外、スザクという相手に答えるべき答えとして思い付くものがなかった。
「……悪いな。」
ぽつりとルルーシュは謝罪を口にする。
スザクの問うたものにこれでは答えになっていないと思ったからだ。それでもスザクは、やはりぽつりと「もう少し、待ってて」と言った。
「スザク?」
「ナナリーにも、君にも……僕たちが自由に生きていける世界。今は無理でも、いつかきっと、つくってみせるから」
その声に、ルルーシュはぴんと身体を硬直させる。
スザクは笑みを浮かべる。約束だ、と。言わんばかりに。
ルルーシュは何を思ったのだろうか。スザクが見た彼は、スザクの言葉に瞠目していた。暗がりではよく表情が見えず、その内心も推し量ることは出来ない。
それでもスザクはルルーシュが緊張を解いたのを感じる。
「……お前がそう言うと、本当にできそうだな」
柔らかい口調だった。真意はやはりわからない。だがルルーシュが本当にそう思っていることは、わかる。
だからスザクは迷いのない口調で応える。
「いつか必ず。僕たちの世界に、変えよう」
ふっ、と息を吐く音がした。
その時、ルルーシュの口元には笑みが浮かんでいた。
「…変える、か…」
何故笑う?何故、そんな笑い方をする?
「ルルーシュ?」
「……何でもない」
ざわり、と何かが波立った。それも今は、冷たい空気が流してくれた。刹那沸き上がった燃える感情を、冷やしてくれた。
感じるのは、握られた手の温もりだけだ。
今は放してしまいたくなかった。繋がった温もりが、目指すべき同じ世界を見ているのだと思うと、とても幸せな気分でいられる。
幾星霜に重ねてきた命。
確かに、この星空の下は幸福だった。
2006.12.05